第5回目となる❝LVMH ウォッチウィーク 2024❞が1月28日-2月1日まで行われ、LVMHグループに所属するゼニスやブルガリ、ウブロ、タグ・ホイヤーといった時計メゾンから新製品や新作の発表がされています。今回からはダニエル・ロート、ジェラルド・ジェンタという2つのメゾンも参加し6ブランドによる新作見本市がアメリカのマイアミで開催されています。

現時点でゼニスからは「トリプルカレンダー」と「クロノマスタースポーツ」という2シリーズの新製品が発表されました。
どちらも別々のベクトルで全く引けを取らない話題性に満ちた腕時計です。
「トリプルカレンダー」は1969年に製作されたA386の当初の設計図を再現したモデルであり54年の時を超えて正式ラインナップに加わる歴史的な話題作です。
大してクロノマスタースポーツとはゼニスでは2021年発表されたコレクションであり、ロレックスのデイトナに似ているとも言われ話題になった時計です。
LVMH ウォッチウィーク 2024
時計・宝飾の国際見本市(新作展示会)といえば1917年からスイスのバーゼルで開催されてきたバーゼルワールド〔Basel World〕がこれまでメジャーでしたが、出展料の高騰や、ヨーロッパの不景気、そして新型コロナウイルスの蔓延などで参加ブランドが激減し、衰退の一途を辿っております。
1991年にはカルティエ擁するリシュモングループがこのバーゼルワールドから離脱し、ジュネーブサロンという見本市を立ち上げます。2020年からはウォッチ&ワンダーズ ジュネーブ(Watches & Wonders Geneva)という名に変更し、現在では最も大きい時計宝飾の国際新作見本市と言えます。
その中で2020年よりLVMHグループは独自の新作発表会を行っており2024年で5回目を迎えています。
ゼニス – ZENITH –
ゼニスは1865年に創業したスイスの時計メーカーで、時計好きであれば誰もが知るブランドす。また同時に、ゼニスというブランドを知らない人でも知らず知らずの内に「ゼニス製」の製品を使用している可能性は大いにあります。
それはゼニスが生み出した歴史的名作ムーブメント❝エル・プリメロ❞です。
当時のスイス時計産業が分業制=(ケースを製作する会社、ムーブメントを製作する会社、ダイアルを制作する会社、細かく言えばネジを製作する会社など所謂 町工場スタイル)だったのに対し、早くから自社一貫製造=マニュファクチュール化を推し進めた名門ブランドのゼニスは❝エル・プリメロ❞という世界初のクロノグラフ用自動巻きムーブメントの開発に成功します。

これは当時セイコーやブライトリング、タグ・ホイヤーなど各大手メゾンと競争した中で偉業中の偉業です。
この❝エル・プリメロ❞誕生がどれだけ時計史における偉業だったかを説明するのは非常に簡単で当時❝エル・プリメロ❞というムーブメントを購入し、自社の時計に組み込んだブランドを羅列するだけで凄さが伝わります。
✔ロレックス
✔エベル
✔ブルガリ
✔パネライ
✔ルイ・ヴィトン
✔ウブロ
✔パルミジャーニフルニエ
これだけの名だたるスーパーブランドが❝エル・プリメロ❞というムーブメントを購入し、自社の時計に使用していました。
また、ロレックスのデイトナなどを中心に❝エル・プリメロ❞が搭載されているかどうかは今日でも重要視されており、リセールバリューでは2000年~2016年まで製造されたデイトナ 116520よりも、1988~2000年まで製造されていた❝エル・プリメロ❞搭載デイトナ 16520の方が価値が上!!という事実があります。
2024新作 クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー
ゼニスが2024年に発表した1つ目の新作が「クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー」です。
ゼニスによるとこの新作クロノマスター オリジナル トリプルカレンダーは「1969年のA386の設計図を忠実に再現した」とのことですが、よほどのゼニスファンでない限り「あれ?前にもA386って復刻して無かったっけ?」という疑問が浮かびます。
そもそもゼニスのA386とはなんなのでしょうか?
こちらがA386です、伝統的なゼニスカラーのインダイアルをしているだけでなく実はこのモデル、名機である❝エル・プリメロ❞が最初に搭載された時計史に残る記念すべき初のクロノグラフ時計として瞬く間に人気となりました。
そして2021年にA386の現代版解釈として現在のゼニスの技術力により発表されたのが「✔ クロノマスター オリジナル 1969」です。
クロノマスター オリジナル 1969
現在定価 1,254,000円で販売されているクロノマスターオリジナル1969(上記は03.3200.3600/22.M3200)は1969年のA386をリメイクしたモデルで一部カラーでは現在も品薄状態で正規店での購入ができない場合もあります。
リセールマーケットでは定価を上回る価格で取引されることはありませんが高い価格を誇っており、中古市場でクロノマスターオリジナル1969を探しても100万円は用意する必要があります。
クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー
そして本題の2024年新作クロノマスター オリジナルトリプルカレンダーですが、実は1969年のA386には設計図段階でのプロトタイプモデルが存在したのです。
実は設計図ではA386はトリプルカレンダー(月、日付、曜日)にムーンフェイズ(月の満ち欠け)、クロノグラフを搭載するように設計されていたようです。
そしてゼニスはこのアイディアを製品化するに向けて25本のテスト用時計を製作します。ところがその間に、ゼニスのエル・プリメロに続くようにブライトリングやセイコー、タグ・ホイヤーなどが自動巻きクロノグラフムーブメントを次々に完成させ製品化させて行きます。
時計業界に一気に自動巻きクロノグラフ時計の波が押し寄せ、❝エル・プリメロ❞という稀代の名機の生みの親でもあるゼニスもこの流れに乗り遅れるわけにはいかず、トリプルカレンダー搭載のA386計画は頓挫、そして実際にはシンプルな機能のA386が世にリリースされたというのです。

こちらが大手オークション クリスティーズに出品された幻のA386トリプルカレンダープロトタイプ25本の内の一つです。これまでオークションに2本出品されているようで、1本は2012年に約4万ドル(当時の相場で約300万円)で落札され、もう1本は2015年に約7万5000ドル(当時の相場で約940万円)で落札されたようです。
そしてこの個体化は定かではありませんがゼニスは2012年に、このA386 トリプルカレンダーを買い戻したことを発表しています。
そこからさらに12年の月日が経った2024年に、03.3400.3610 クロノマスターオリジナル トリプルカレンダーが発表と考えると非常に感慨深くあります!

✔3カラー(グレー/ホワイト/カーキ)
✔定価1,837,000円
✔38mmケース
✔振動数36000Vph
✔60時間パワーリザーブ
✔5気圧防水
✔トリプルカレンダー
✔ムーンフェイズ
と当時の設計図に通りに現代の技術力で造られたゼニスの腕時計です。2023年に八男擁されたIWCのインヂュニアもそうでしたが当時どうしても再現が難しかったり、技術的、ビジネス的に頓挫したデザインが現代ならば可能になる!といったバックボーンは心擽られるものがありますね!
2024新作 クロノマスター スポーツ
もうひとつの新作についてはその経緯やサイドストーリーではなく、クロノマスタースポーツの新作ウォッチ03.3119.3600/56.M3100を先に紹介します。

2021年に発表され、その年のジュネーブ時計グランプリ(GPHG)2021で「クロノグラフ」賞を受賞したクロノマスター スポーツは現在のゼニス、そして時代を代表するラグジュアリースポーツウォッチです。
そのクロノマスター スポーツからNEWカラーが通常ラインナップに加わります。鮮やかなグリーンのセラミックベゼルにダイヤル、そしてルー、アンスラサイト、ライトグレーという3色で彩られたゼニスカラーが特徴の一本です。
✔定価1,496,000円
と通常カラーと比べるとロレックスのサブマリーナーデイト出いうブラックとグリーンと同様にややグリーンが割高で88,000円ほど上です。
…
…
と、非常にクールな一本ではあるのですが個人的には「え、これ通常ラインナップに加えちゃうんだ…」という複雑な思いもあります。その理由を以下で説明していきます。
理由①そもそものカラーリング
そもそもこのセラミックのグリーンベゼルのスポーツウォッチとしてはロレックスのサブマリーナーデイトが一番初めに浮かびます。ロレックスのサブマリーナーデイトもグリーンモデル、通称グリーンサブはサブマリーナー生誕50周年の2003年に発表されたモデルです。
✔16610LV
✔116610LV
✔126610LV
と2003年の限定で終わらずに、2024年現在も同様のカラーリングであるグリーンサブはラインアップされています。



当ブログでも紹介しましたがこのグリーンサブはそれぞれの年代のモデルで別々のニックネームがファンから付けられるなど多くの人から愛されるモデルの一つです。2003年発売の初代(通称カーミット)や2代目の116610LV(通称ハルク)は販売当時定価の倍以上の価格で取引されることも多々あります!
このグリーンサブは2003年にサブマリーナー生誕50周年を記念してリリースされたのですが、ロレックスのブランドカラーでもあるグリーンを使用していることもあり他モデルでもグリーンカラーが出るのでは!!と度々話題になります。
その中で2022年に発売されたのが、グリーン×ブラックのセラミックベゼルを備えたモデルでもあるGMTマスターⅡ 126720VTNRです。こちらも定価以上で取引されています。

こちらの GMTマスターⅡ 126720VTNR(通称:レフティ、スプライト)は定価1,614,800円ですが当然のように正規店での購入は難易度SSSで、リセールマーケットでは最低でも270万円は下らないプレ値となっております!
…..とロレックスの「グリーンベゼル」はここ30年で定番化し、さらにセラミックベゼルが登場した2010年代以降ではロレックス×グリーン×セラミックベゼルは十八番と言えます。
そんなことからロレックスの他モデルでもこのグリーンベゼルモデルは新作発表シーズンになると多くの予想や希望が出ています。
記憶に新しいのは「デイトナ生誕60周年」を迎えた2023年。前述の国際見本市ウォッチ&ワンダーズ前には「60周年記念でデイトナのグリーンVerが登場するのでは!」と多くの予想と画像が出回りました。
それがコチラ

もちろんこんなデイトナは商品化されてはいませんが、ロレックスにとって大事なグリーンを使用したデイトナは待望論も根強く、ネットで探せばコピーロレックスやユニークロレックスのオマージュ商品がすぐに見つかります。(買っちゃダメ!絶対!)

ブランドのロゴにもグリーンが使用されているロレックスのグリーン使用はしっくりきますが、対するゼニスのロゴは白・黒・ネイビーが使われていてグリーンを押し出すには若干の違和感もあります笑
グリーンのデイトナに待望論が巻き起こっているのはゼニスも同じ業界の名門として知っているでしょうしね!
理由②2023年にショップ別注限定で発売されていた
とはいえゼニスによる「クロノマスタースポーツ」のグリーンモデルが発表される前段階があったことを皆様お覚えでしょうか?
まずは2023年の春頃に話題となった日本の高級時計・宝飾店「YOSHIDA」の❝別注❞モデルです。こちらについては当ブログでも取り上げさせて頂きましたので宜しければそちらも合わせてご覧下さい。
こちらの「YOSHIDA」は日本を代表する高級時計・宝飾の販売店なのですが、ゼニスの別注モデルにおいては「あえて…!」ロレックスで話題になったり人気作になったカラーリングを模倣するのが定番となっています。(公式発表はされておらずロレックスに似たカラーというだけで偶然の可能性もありますので、あくまでも私の感想です。)
例えばこちら!


(左)がロレックスのデイトナ116508 通称ジョン・メイヤーデイトナです。ギタリストのジョン・メイヤーが購入したことから一気にプレ値化したこのモデルですが2023年にひっそりと廃盤に。そんな中でYOSHIDAがゼニス別注モデルとして発売したのが(右)のクロノマスター スポーツ ヨシダスペシャルエディション 30.3100.3600/56.M3100 世界限定180本です。
そしてお次が


(左)が2013年発表ロレックスのアイスブルー文字盤のデイトナです。素材はプラチナのみ。この品番116506の定価はなんと8,013,500円!それでも正規店での購入は困難でリセールマーケットでは1,500万などで取引されていました。2023年から発売の現行品の126506は定価が一千万円の大台を突破しています。
そして登場したのがスポーツ ヨシダスペシャルエディション03.3106.3600/55.M3100 世界限定300本です。この別注ゼニスが素材がステンレススチールのため定価165万円とかなりお買い得に感じます!
….とまぁロレックスで人気や待望論が強いカラーリングをゼニスとの協力タッグでしれっと誕生させてしまうYOSHIDAですが、グリーンデイトナも誕生させちゃいます笑

はい、やりました。
03.3108.3600/57.M3100と03.3107.3600/56.M3100です。定価はどちら165万円。
YOSHIDAは販売店としてお客様のニーズに応えたいとの思いから別注カラーの製作をゼニスに依頼したことでしょうが、びっくりなのはこの歴代のヨシダスペシャルエディションを良くゼニスがGOサイン出したあ、と!
日本一の時計販売店とは言えど、あくまでも世界的な有名百貨店とかでは無いのでそれほど影響力は無いとでも思ったんですかね。
ちなみにヨシダスペシャルエディションはいずれも即完の人気のようで、リセールマーケットにおいても通常のゼニス クロノマスタースポーツよりも高値が付いています!
理由③アーロン・ロジャース シグネチャーモデル発売
YOSHIDAでの別注モデルのクロノマスタースポーツから僅か数か月、ゼニスはまたしてもグリーンのクロノマスタースポーツを発売します。2023年の11月2日に発売、品番は03.3117.3600/56.M3100 でなんと数量250本限定、国内定価は1,529,000円の本当のスペシャルエディションです。

アーロン・ロジャースはNFLプロアメリカンフットボール選手で、史上最高のクォーターバックの呼び声も高いスーパースターです。ゼニスのブランドアンバサダーを務めており、グリーンベイ・パッカーズに所属していました。(現在はニューヨック・ジェッツ所属)
16年間所属したグリーンベイ・パッカーズもニューヨック・ジェッツも緑色をチームのメインカラーとしておりゼニスもここから採用したと見られます!
通常のクロノマスタースポーツやヨシダスペシャルエディションではバーインデックスでしたがアーロン・ロジャースエディションではアラビア数字のインデックスになっており、特徴的です!
アメフトファンにとってはサッカーファンにとってのメッシモデル、野球ファンにとっての大谷翔平モデルと同等のレジェンドモデルで限定数量の250本は即完売。現在では定価を超える約180万円前後で無いと手に入れることができません。
グリーンとの親和性が低いゼニスでしたが販売店の別注モデルに続いて、アンバサダーでもあるアメフト界のレジェンドとのコラボエディションと言うことでグリーンモデルを繰り出してきたと言うことです。
2024新作 クロノマスター スポーツ 03.3119.3600/56.M3100
という経緯を経て、LVMHウォッチウィーク2024でクロノマスタースポーツ 03.3119.3600/56.M3100 が通常ラインナップに加わることが発表されたのです!
これまでは
「日本の販売店別注だから」
「アーロン・ロジャースのシグネチャーモデルだから」
という言い訳があったものの今回はがっつり定番商品化であります。

✔搭載ムーブメントは伝説的なエル・プリメロの最新機
✔ラグジュアリースポーツウォッチなデザインとセラミックベゼル
✔ゼニスカラーとも言うべき3色のインダイアル
✔ロレックスには無いカラーリング
✔定価1,496,000円
と文句なしの時計で間違いなく格好良いモデルです。
が、同時にクロノマスタースポーツを発表した時に「デイトナみたい…」と言われ、さらにロレックスに待望論の強い「グリーン版」を発売したゼニスですが上に上げたように魅力はたくさん溢れてるのも事実。
ロレックスは2024年の価格改定でデイトナが2,176,900円とついに200万円超えを果たしています。この正規店定価で購入することさえ困難なのですがゼニスであれば150万円でお釣りが来るのも魅力ではないでしょうか。
ゼニスのクロノマスタースポーツはリセールマーケットにおいても人気で最大70~80万円での買取が可能となっております。
「それロレックス?デイトナ?」と聞かれることはあるかもしれませんが、ゼニスにはかつてそのロレックスにもエル・プリメロという名作ムーブメントを供給してた歴史がありますので「いやゼニス」とドヤ顔で言うのも❝通❞ぽくて良いと思います。
まとめ
今回のLVMHウォッチウィーク2024を受けての時計誌や時計のウェブマガジンなどを見ていると圧倒的に『2024年のゼニスの目玉はクロノマスタースポーツ!』という記事が多いのが分かります!
確かにメディア受けするのはクロノマスタースポーツのグリーンなのですが実際に購入するとなると間違いなく良い製品であるものの上に書いたような気になる点があるのも事実です個人的には。
それよりも「クロノマスターオリジナル トリプルカレンダー」の復刻という方が個人的には手にしたい1本です。近年では2020年発表の『オメガのキャリバー321を搭載した復刻スピードマスター』やジェラルド・ジェンタ氏の当初のデザイン案を再現した2023年の『インヂュニア』のように魅力的に感じます!
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