先日カルティエの パンテール ドゥ カルティエを買取させて頂いたのですがふとカルティエのホームページを見るといつの間にかいくつかの時計のリファレンス=品番が変更されているようで「何事!」となりましたので調査を致しました。

カルティエの代表的なコレクションでもある❝パンテール❞についてその歴史を紐解くと共に冒頭の『リファレンス変更の理由』『仕様変更!?』についてもしっかり答えを出していますのでご参照ください!
答えのみお求めの方は
・2023年 品番(リファレンス変更)の理由と変更点
まで飛んでください!
カルティエ
言わずもがなではありますがまずは改めて「カルティエとは」から行きたいと思います。
メゾンの創業者であるルイ=フランソワ・カルティエが、自身の名を冠したジュエラーをオープンさせたのは1847年。今から170年以上も前のことになりますが1847年となると日本はまだ江戸時代ですのでヨーロッパの歴史がどれだけ深いかがそれだけでも分かると思います。

ルイ=フランソワ・カルティエがその6年後にパリで自らのブティックを開くと、彼の美意識と技術は、ナポレオン3世の妃、ユウジェニー皇后をはじめとした王族貴族たちを次々と魅了していく。英国王のエドワード7世からは、「宝石商の王であるがゆえに、王の宝石商」と讃えられ世界5大ジュエラーの一つとして君臨しています。
1939年までに15カ国から王室御用達の特許状を受けるに至った。現在、これらのうち9王室の紋章がパリ本店の入り口左右に掲げられています。
カルティエ以外の世界5大ジュエラーとは
・ヴァンクリーフ&アーペル
・ハリーウィンストン
・ブルガリ
・ティファニー
と言われています。

ジュエラーとしてスタートしたカルティエですがと時計=ウォッチ業界でも確かな地位を確立しています。カルティエがそれ以外のジュエラー系ブランドと比較しても多くの人、特に女性だけでなく男性からの支持も凄まじいのは早くからカミソリやライターなどのメンズ向け商品を世に生み出していた事に加え「時計業界」での地位確立を果たしていることが挙げられます。

世界初の腕時計はカルティエが製作した。
これは様々な所で記載されていますが正確には『カルティエが世界初の❝男性用❞腕時計を製作した』になります。3代目のルイ・カルティエが経営に参加してからはカルティエは時計製造に力を入れていました。
1880年代には現在の腕時計とは異なりますが、ジュエラーとしての技術を用いてジュエリー要素の強い腕時計は既に製作していたカルティエですが1904年に現在の腕時計に連なる❝腕時計❞を製作します。
ブラジルのコーヒー王の子息で富豪、飛行家でもあるアルベルト・サントス=デュモンは当時友人で会ったルイ・カルティエに「飛行機の操縦中に(当時の主流であった)懐中時計を見ることは難しい」と話したそうで、それを受けたカルティエは腕に着けることから着想し時計を製作しました。

製造はルクルト社が行った。
その後1911年にはこのアルベルト・サントス=デュモンの許可を受けた上で正式にこのモデルを❝サントス❞として命名。
それまで腕時計とは装飾品として女性が着けるもの。男性時計と言えば懐中時計を腕に無理やり巻いたもの。というのが一般的でしたが、サントス=デュモンが認め世界的大富豪で著名人の名を冠した❝サントス❞は市販化されるとエレガントかつ実用的とヒット商品となり、今日まで続く腕時計の常識を作った名作です。
パンテールとは
ご存知の方も多いと思いますがパンテールとは「PANTHÈRE」と書き、意味は「ヒョウ=豹」のことです。英語読みにするとパンサーです。
メゾンを代表するコレクションであり、時計ではなく元はジュエリーのコレクションです。現在でも多くのモデルがラインナップされています。

カルティエは公式ホームページにて「パンテール」について以下のように記しています。
パンテールはメゾンを象徴する動物です。気高く飼いならせないパンテールの象徴性とエレガンスは、1914年に初めて登場して以来、メゾンの創造性に大きな影響を与えてきました。これまで以上にパンテールはデザイナーたちにとって尽きることのないインスピレーションの源であり、その魅力は、身に着ける人を包み込みます。
https://onl.la/k8LhRQi
装飾品に凶暴な生物=人間にとって脅威になる生物を用いる。というのはパンテールだけに限ったことではありません。ワニ革やヘビ革、さらにサメなどもパンテール=豹と同様に時には人間を命さえも脅かす生物界の頂点に君臨する捕食者であり、それらを身に纏うことは同時に権力の象徴でもあったのです。
初代パンテール
「パンテール(豹)と女性」という題材自体は世紀末から絵画の世界においては頻繁に扱われていました。中世以来、パンテールはヨーロッパで❝神秘で気高い生き物❞ と崇められており、それが女性と結びつくことで魅力を醸し出すと捉えられていたそうです。
そんな中で1914年にはじめてパンテール(豹)がモチーフとなったのが下の時計です。現在のパンテールコレクションとは大きく異なり、ラウンド型のケースに宝石のオニキスとダイヤモンドをあしらったジュエリーウォッチです。

一般的には馴染みこそ薄いこちらの「パンテール」ラインは現在では「パンテール ジュエリーウォッチ」として別個で扱われ大切にされています。
この1914年の登場から数年も経たないうちに、カルティエの元へ本物のパンテールの毛皮を纏ったひとりの女性が現れます。のちのルイ・カルティエのミューズにもなり、メゾンを率いるジャンヌ・トゥーサンです。
ジャンヌ・トゥーサン
第一次世界大戦の勃発前後に、カルティエではいくつかの歴史がうごいています。ひとつは、上記で説明した ❝1914年のパンテールの誕生❞ です。そして3代目ルイ・カルティエと、メゾンの運命を変えていくこととなる一人のミューズとの出会い、「ジャンヌ・トゥーサン」です。

1920年代からメゾンに参加し、1933年にはカルティエのハイジュエリー制作部門の統括責任者に就任しています。実は創業者の孫である3代目のルイ・カルティエとは恋仲だったようですが身分の違いなどからカルティエ家から結婚は反対されて叶わなかったようです。それでもジャンヌ・トゥーサンのセンスと才能に惚れていたルイ・カルティエはメゾンの将来を任せたいとジュエリ部門の責任者にジャンヌ・トゥーサンを抜擢したという逸話も残っています。
分かりやすく例えるのであれば、ガブリエル・シャネルがオートクチュール(高級特注服)界の女王であるのに対し、ジャンヌ・トゥーサンはオート・ジョワイユ(特注宝石製作)界の女王で並び称される存在です。
毛皮などを好み、宝飾業界初の女性責任者を務め、そのセンスで多くの貴族や王族をも魅了したジャンヌ・トゥーサンはルイ・カルティエから「La Panthère -パンテール(豹)-」のニックネームを付けられました。
その生涯をカルティエに捧げたジャンヌ・トゥーサンを讃え、彼女の死後も「パンテール(豹)」をモチーフとした製作が続いています。
カルティエは今でもジャンヌ・トゥーサンを讃えており「ジャンヌがパンテール、ジャンヌこそがパンテール」で始まる動画も作成しています。
オーシャンズ8にジャンヌ・トゥーサンが登場
2018年に公開されたハリウッド映画「オーシャンズ8」ではサンドラ・ブロックやケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、リアーナなどの豪華俳優陣が演じる泥棒犯罪集団がカルティエのジュエリーを盗み出すというストーリーでしたが、この時のカルティエのジュエリーが「トゥーサン」という名前でした。
劇中でオーシャンズ8が盗み出し、アン・ハサウェイは身に着けるジュエリーがトゥーサン。

カルティエは1931年に制作したネックレスをこの映画のために復刻するにあたり、メゾンのミューズであったジャンヌ・トゥーサンへの賛辞を込めて「トゥーサン」と命名。メゾンにとって、ジュエリーの歴史にとってジャンヌ・トゥーサンが特別な存在であることを、映画を通じて改めて世界に発信しました。
パンテール ドゥ カルティエ
現在の見慣れたパンテール ウォッチは1983年に登場します。
側面から見たときにパンテール(豹)が手足を真っすぐに伸ばした姿を表現しているようです。
メゾンの歴史の一部であるジャンヌ・トゥーサンとパンテールを大切に扱ってきたカルティエですが実はこのパンテール2008年に一度廃盤となっています。
廃盤のワケ
カルティエをはじめとするハイブランド各社やメゾンは「廃盤理由」というのを公にする事は基本的にありませんので2008年の廃盤の理由は正確には定かではありません。ですが「パンテール ドゥ カルティエ」が廃盤になった理由については定説となっているものがありますのでそちらを紹介致します。
それがコチラ。
❝サントスを押し出すため❞
と言われています。
カルティエのサントスとは前述の、ルイ・カルティエの友人でもありブラジルのコーヒー王の子息で富豪、飛行家でもあるアルベルト・サントス=デュモンのために制作された「世界初の男性用腕時計」です。
カルティエにとっても時計史にとっても重要なこのモデルの1911年の市販化以降、
・メンズ用の「サントス」
・レディース用の「パンテール」
としてしばらく扱われていましたが時が経つにつれて徐々にこれが崩れていきます。


こちらの左が「サントス」右が「パンテール」なのですが一見するとペアウォッチかのような似通った部分が多いのも特徴です。ですが男性用として作られた「サントス」は全体的にややエッジの効いた仕上げがあれており、ブレスレットはコマが横長で連なるなどしています。一方の女性向けに作られた「パンテール」は女性らしい丸みを帯びた柔らかなデザインに仕上げられておりブレスレットは縦長のものが連なっています。さらにサントスはクォーツから機械式、それも自動巻きや1904年誕生当時からの手巻きモデルがあるのに対し、パンテールはクォーツ一択です。
このように
・メンズ用の「サントス」
・レディース用の「パンテール」
として言わば棲み分けがされてきたわけですが80~90年代に市場の需要に合わせて「パンテールLM(現在は廃盤)」というケース径が37mmというメンズ仕様もものも登場しておりました。
つまり徐々に「パンテール」=「レディースウォッチ」という基本概念が崩れてきていました。さらに2004年には1904年の誕生から100周年というアニバーサリーとして「サントス ドゥモワゼル(現在は廃盤)」というレディース向けのサントスが登場しました。
しかもこの「サントス ドゥモワゼル」はサントスとパンテールを合わせた様なデザインコードになっており、ユーザーにとってはどちらを選ぶべきか悩むという嬉しい悲鳴が起こりました。
そんな中2004年から4年の月日が流れた2008年にカルティエは消費者が悩まずに済む一手を打ちます。サントスによるスポットライトを当てるため(と思われますw)に「パンテール」を廃盤とするのです。
これが1983年から愛されてきた現在の姿をした「パンテール」が25年で廃盤となった理由として有力な説です。
復活 -2017年 現行版パンテール-
元々人気が無くなり廃盤となったわけではないパンテールには常に復活待望論がありました。そんな世間の声にカルティエが応える形で復活したのが2017年のことでした。
2017年にはこのパンテールと入れ替わる形でサントス ドゥモワゼルが廃盤となっており当初の男性=サントス、女性=パンテールという棲み分けの形に回帰することとなりました。
1983年パンテールと2017年パンテールの違い
1983年ー2008年までの初代パンテール
2017-現在までの現行パンテール
の違いは何なのでしょうか。
まず仕上げが異なります。
初代パンテールはケースがヘアライン仕上げナノに対し、現行パンテールはポリッシュ仕上げになるなどよりキラキラとした印象になっています。また、ミニマムサイズのミニ パンテールでは初代時には無かったリューズが搭載されるなどしています。

私個人としての使用する上での最大の違いはバックル部分にあると思っています。カルティエに限らずですが1980年代-1990年代と2000年代ではロレックスやオメガなど多くのメゾンでブレスレットおよび「バックル」の進化がなされています。
カルティエでも同様にバックル部分が進化しておりより重厚になっており耐久性が増したつくりになっています。上記の写真を見るとバックル部分が大きく異なるのが分かります。
細かく言うと裏ブタのネジの数も違いますね!
2023年 品番(リファレンス)変更
ここから本ブログの主題となりますが1983年-2007年の初代パンテール➔2017年-2023年の2代目パンテールが、いつの間にかさらに品番変更されていることが判明しました。
イエローゴールドモデルのパンテール ドゥ カルティエを例とすると以下の通りです。

初代(1983-2008) | 2代目(2017-2023) | 現行3代目(2023-) | |
ミニ | W25034B9 | WGPN0016 | WGPN0036 |
SM | W25022B9 | WGPN0006 | WGPN0038 |
MM | 83782747 | WGPN0009 |
3サイズでラインナップされている
・ミニ サイズ WGPN0016 ➔ WGPN0036
・SM サイズ WGPN0006 ➔ WGPN0038
・MM サイズ 83782747 ➔ WGPN0009
とリファレンスが変更されています!!
次にイエローゴールドにダイヤモンドベゼルが入ったモデルも

初代(1983-2008) | 2代目(2017-2023) | 現行3代目(2023-) | |
SM | WF3070B9 | WGPN0015 | WGPN0048 |
MM | WGPN0009 | WGPN0016 |
とこちらも
・SM サイズ WJPN0015 ➔ WJPN0048
・MM サイズ WJPN0009 ➔ WJPN0016
とリファレンス=品番が変更されていることが分かりました。
ちなみに同様にステンレススチール製のパンテール ドゥ カルティエやSS/YGのコンビのパンテール ドゥ カルティエ、さらに別モデルのタンクやサントスも調べてみましたが現在時点でリファレンス変更が確認できたのはパンテールだけでした。(当店調べ)
何が変わってるの…..何があった………とういことで

リファレンス変更の理由、調べました!!!!
2023年 品番(リファレンス変更)の理由と変更点
答えを早く知りたい方のために結論から先に申し上げます。
ずばり….

「本体自体の変更はありません。ブレスレットにおいてコマが一コマ減っております。」
とのことでございます。
つまり
・デザインなどモデルの外観上の変化
・搭載ムーブメントの変更
などは一切ないとのことです。

「(1コマ減の理由は)元来パンテールはブレスレットが長く、コマ調整をされるお客様が非常に多いため。」
とはカルティエのアンバサダー様が仰られておりましたが、大和屋質店スタッフ私個人の見解を申し上げますとやはり金価格の上昇が理由なのではないでしょうか?
金相場は10年前はK24で4,000円台だったのに対し2013年現在は10,000円の大台になるなどニュース等でも大きく報じられるほどに高騰しています。これらはジュエリーや腕時計類にも大きく影響します。
例えばにはなりますが金を使用してジュエリーや時計を製作する際にも10年前の倍ほどの原価が必要になるということです。為替の影響だけでなく金相場の高騰も昨今のハイブランド定価UPの原因です。

例えばの話、上記の2コマ分で2.6gほどの重さがありますので1コマだと1.3g。つまり金そのものの原価でも10,000円の価値が現時点であります。そこにカルティエの高い技術力などが加わりますので1コマ分削減というのは金額だとバカにできません。
つまりカルティエではい金無垢のモデルを購入する場合、例えばパンテール ドゥ カルティエ SMサイズのイエローゴールド製モデルを購入する際、現行モデルWGPN0038は前機のWGPN0006と比較して、時計本体に違いは無いがコマが一コマ分少ないです。
これらはピンクゴールドモデルも同様です。
まとめ
今回はカルティエのパンテール ドゥ カルティエが品番=リファレンス変更されているとのことで調査致しました。特に大きな発表などもなく仕様変更されておりますので中古品などをお探しの方のお役に立てればと思います。
パンテールに関しては現行機種で探すよりもひとつ前のモデル(所謂2017年-2023年までのモデル)で探した方がコマ一つ分お得です!笑
カルティエ正規店での購入の場合は全て現行品版に切り替わっていると思いますので旧品番でお探しの方は並行・中古時計屋さんへお問い合わせ下さい。


カルティエは前述の「パンテール」の歴史や出で立ちの通りこのコレクションをとても大切に扱っており時計に限らず今も発信を続けております。
2022年と2023年にはそれぞれBLACK PINKのジスとBTSのVをアンバサダー起用しさらなるマーケティングを計るなど「パンテール」のさらなる躍進を狙っています。
ブルガリの「セルペンティ(蛇)」
やカルティエの「パンテール(豹)」はメゾンを代表するコレクションであり、誰もが一目でその存在に気付く圧倒的な雰囲気を持っています。
そのためリセールマーケットでの人気の高さも期待できます。


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